連載2-56、理想の鳩を作るために

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このコーナーは、会員の方からの寄稿や過去に掲載された本誌の記事を元に、伝書鳩及び鳩レースの今昔を鳩仙人の語り口で掲載します。本稿は本誌で連載された「レース鳩作出余話」(83年〜87年連載)を引用・改編しています。

レース鳩を作ることは楽しい。卵が孵化してヒナが育つ、わしらは「どんな優秀な成績を上げてくれるか」と期待を込めて、その健やかな成長を見守る。

しかし、これらの若鳩達が秋のレースに参加した時、果たして期待通りの成績を上げてくれるか、翌年以降の春季レースで立派な成績を示してくれるか、ということになると、なかなかに難しい問題じゃのう。愛鳩家は皆、ひとしくこれを望んでおるが、満足なレース成績を上げてくれる鳩は、数えるほどしかおらぬ。

わしらが、毎年繰り広げられる厳しいレースを勝ち抜く鳩を作出するためには、そのために必要な諸条件の全てを満たす能力を持った鳩を作り出さねばならぬ。

わしは、その諸条件を第一にスピード性、第二に悪天候克服性として上げてきたが、これらの性能を十分に発揮させるために、第三としてレース鳩の強健性、そして第四に知能の優秀性を指摘しておきたいのう。

レース鳩の日常を観察していると、それぞれの鳩が種種雑多の個性を持っておることに気付く。賢い鳩とそうでもない鳩、要領の良い鳩と悪い鳩、飼い主に馴れる鳩と馴れない鳩、怖がりな鳩と大胆な鳩といったような性質は、レース鳩にとって非常に大切であり、勝敗を分かつ問題にも連なっておる。

これらの4点がレース鳩として優秀な成績を上げ、毎シーズン続けて力を発揮し続ける基本性能じゃ。わしらの目標は、これらを完全に兼ね備えた個体を作出することに尽きるのう。では、どのようにしてこの4点を備えた俊鳩を作り出すかという方法を検討してゆくことにするぞ。

まずは基礎となるスピード性を持った鳩に、どのようにして悪天候克服性を兼ね備えさせるかという問題じゃ。もっとも簡単な方法は、この2つの条件を兼ね備えた血統の鳩を探すことよのう。地元のレースコースで連勝している鳩舎、その中でも天候にかかわらず、立派な成績を上げている理想的な鳩群がいないかを調べてみると良いじゃろう。

さらには、その鳩舎の管理や訓練がさほど完璧でないのに、好成績を上げておれば最高じゃ。このような場合、鳩群の強健性も十分であると考えられるからのう。

では、この続きは、次回に譲るとするかのう…。
(この稿、続く)

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