趣味のピジョンスポーツ 第20回「鳩は趣味の一つ、悠々自適なピジョンライフ」 福田隆安鳩舎
「今は仕事も引退して、のんびりと過ごしています。鳩飼育は趣味の一環で、他に油絵やコンピュータグラフィックス作品の制作もしています」。
落ち着いた語り口で、自らの生活振りを語るのは、岡山県在住の福田隆安さん(73歳)。国内の2つの協会で、地域の優秀鳩舎賞ベストスリー入賞を8回獲得した強豪鳩舎として知られた福田さんですが、現在は当協会の賛助会員として、委託専門で鳩レースを楽しんでいらっしゃいます。
福田さんが鳩を飼い始めたのは、中学2年生の時。当時は神奈川県横浜市で暮らしていましたが、当時の鳩ブームに乗り、近所で鳩を飼っている方から譲って頂き、10羽ほどを飼っていたそうです。
「中学3年生の時、父親の仕事の関係で岡山県に引っ越しました。この当時はレースは行っていませんでしたが、関東での思い出として、クラスの鳩友に誘われて、東京都の大木有隣鳩舎を訪問したことを覚えています。岡山県に引っ越してからは、地元の強豪鳩舎だった友野 治鳩舎へ、よくお邪魔していました。この時、『鳩は血統が大切。異血の導入方法で鳩の良い悪いは決まる』ということを教えて頂きましたね」(福田さん)。
その後、高校、専門学校へと進学し、卒業後は医療系の技術職に就いた福田さん。鳩は飼い続けていたものの、レースは行っていなかったそうですが、30歳を越えた頃、不意にレースを始めることになったのだとか。
「もちろん鳩を飼っていたのでレースには興味がありましたが、きっかけが無くて…。それが、ちょうど30歳を前に庭付きの一軒家を購入することになったんですよ。敷地が広いから、鳩舎も新築しました。それが、レース歴の始まり」。
早速、地元の山陽地区連盟・備前連合会へ入会。鳩飼育の経験はあるものの、いざレースを行うとなると、驚きの連続だったといいます。
「まず、持ち寄りの鳩の数の多さにビックリしました。当時は参加羽数も多く、1レースで最低でも5、6時間はかかりましたからね。それを皆、仕事を終えてからやっているので、本当に大変だなと。中間訓練では、滋賀県まで鳩を新幹線で持って行ったこともありますよ。ただ、自分と同年代の会員さんが多かったので、そういった苦労も楽しかったですね」。
遅咲きの鳩レースデビューとなりましたが、福田さんのレース成績は上々。82年には笹川名鳩賞(現在の会長賞)、86年春季連盟優秀鳩舎賞3位、89年春季同2位、92年秋季同3位、94年に御殿場500K総合優勝など、活躍されました。
しかし50歳代の頃、地元連盟の諸事情から会員の他団体への移籍が相次ぎ、福田さんも日本伝書鳩協会の中国支部連盟・岡山県支部合同会へ移籍。その後も、99年に連盟優秀鳩舎賞1位(全国6位)、00年同1位、02年同2位と、地元の強豪鳩舎としての地位を確立していきます。
そんな福田さんに転機が訪れたのは、65歳の時。同協会を退会し、当協会へ賛助会員として、再入会したのです。日本伝書鳩協会、日本鳩レース協会の両協会で、レースマンとして多くの実績を挙げていたにもかかわらず、委託レース専門へと移行したのには、どのようなわけがあったのでしょうか?
「仕事柄、コンピュータを専門にしていたことから、支部の役員をしていたため、レースの審査などを全て担当していたんです。先ほど言ったとおり、私はライフワークとして、鳩飼育以外に油絵やCG(コンピュータグラフィックス)といった作品の制作もしています。近年、年齢的なこともあり、鳩の役員の務めで、作品制作が圧迫されると感じてきたんです。そこで後輩の会員にパソコン操作を指導し、後継者ができたところで退会決めました。ただ鳩飼育も続けたかったため、委託レース専門に鞍替えしたという訳です」。
こうして13年から賛助会員として、委託レースを開始。八郷・伊賀の両国際委託鳩舎や個人の委託鳩舎へ鳩を預けるようになりました。現在までの代表的な成績は、個人委託鳩舎での優勝3回(150K、200K、300K)、15年伊賀国際ウィナー300K第6位、20年同第7位、21年伊賀オータムカップ200K第5位など。委託専門となった同鳩舎ですが、さすが強豪鳩舎だけあって、鳩作りにはこだわりがあるようで…。
「自鳩舎の主流はデルバールやグランドラースの筋ですが、委託専門ですから、種鳩も委託で活躍するラインを考えながら導入します。基本的には実績を重視。タテ・ヨコ・ナナメの翔歴を見て決めますね。委託するヒナも、骨格や肉質を見て選別します。ただ、ずっと岡山県でレースをしていたので、関東地域で飛ぶトリのイメージが掴みにくいですね。だから、八郷鳩舎に委託するトリは難しい(笑)。目標とするレースは、やはり『八郷国際CH900K』。東日本CHレースは子供の頃からの憧れでしたから」。
今後は「自鳩舎の飛び筋を中心に委託レースに挑戦する」という福田さん。最後に鳩レースの魅力を聞くと…。
「一番は、交配を考える時ですね。血統構成を組み立て、レース結果を予測して委託する、これが最高ですね。あと先日、国際委託鳩舎の委託鳩を空港に持って行った時、賛助会員の人と会ったんですよ。同じ趣味を持つ方と出会うのは、やはり嬉しいものがあります。一般の方には、鳩を飼うのは大変だというイメージがあるようですが、そんなことはありません。たくさんの人々が、鳩の魅力を発見してくれれば良いなと思います」。
2001年からずっと、鳩に関する自身のホームページも開設しているという福田さん。これからも、悠々自適なピジョンライフを満喫して欲しいものです。