連載2-69、デ・スカイマーカー氏との会見 その三

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このコーナーは、会員の方からの寄稿や過去に掲載された本誌の記事を元に、伝書鳩及び鳩レースの今昔を鳩仙人の語り口で掲載します。本稿は本誌で連載された「レース鳩作出余話」(83年〜87年連載)を引用・改編しています。

では、当時のベルギーの競翔家たちは飼料をどう与えておったのじゃろうか?

1965年、わしが初めて欧州の鳩界を視察した際には、競翔家たちはそれぞれ立派な飼料貯蔵庫を持っており、単味の穀物を理想的な乾燥状態でストックしておった。そのため、スカイマーカー氏が言われる配合の加減や投与は簡単に実施できたであろう。

だが時代が進むと、少し事情が違ってくる。日本でも立派な飼料会社ができており、幾多の配合飼料も売り出されておる。もちろん、ベルギーでも同じじゃ。わしらもベルギー人も自分で選んだ配合飼料を基礎とし、適時、適切な必要品目の飼料を追加していくのが、一般的な方法じゃろう。これについては、ファンスピタール氏、ローセンス氏、インブラヒット氏も同意見じゃった。

デ・スカイマーカー氏の話を理解していただくため、わし自身の知識やベルギーの著名競翔家のことも話してきたが、基本的には、どこまでも鳩の要求するものを見極めて与えるべきという意見じゃったのう。また、同氏の会社で売り出している各種の配合飼料は、各地域の需要に基づいて、臨機応変に販売しておったようじゃ。例えば、リエージュ向けの配合飼料には、トウモロコシが全く入っておらなんだ。これは同地域の競翔家がトウモロコシを与えないのではなく、フランス北部地方の一部では、トウモロコシがたくさん収穫される地域があるため、現地で安価に入手して追加するためとの説明じゃったのう。これは余談じゃが、話がトウモロコシのことになった時、「たくさん与えると鳩の体に何か悪い影響が起こるのか」と尋ねたところ、「そんなことはない。かのカトリス氏はトウモロコシを非常に多量に与えていた」と答えられたものじゃ。

レース鳩の飼料の中で、脂肪の供給源としては、昔のように麻の実が安価に入手できない今日、菜種やサフラワーが使いやすい飼料となるのう。なかでも、サフラワーからは人間のコレステロール蓄積に対処するリノール油が取れるわけじゃ。「これは非常に好ましい飼料ではないか」と、デ・スカイマーカー氏に問うたところ、「デューレー氏の経験によると、多量のサフラワーを与えることは良くない。その理由は脂肪は暑い時にないといけないからだ」との説明を受けたことがあるのう。これは、同氏にお目にかかる以前に、息子さんを京都で食事にお招きした時の話においても、「肝臓障害を期す恐れがある」とのことじゃった。ただ、わしは少量のサフラワーを配合することは、むしろ称賛するべきことと思っておるがのう。

さて、長きに渡ったこの章も、ここで終了とするぞ。次からは、また違った語りを続けるつもりじゃ。ひとつ楽しみに待っていてほしいのう…。

(この稿、終わり)

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