連載3-38、日本鳩界の歴史

欧州の発展 その三
ベルギーにおける二大血統「アンベルソア種」と「リェージョア種」は、伝書鳩の改良史を考える上で、非常なる逸材じゃった。
帰巣性、すなわち飛翔力、方向判定能力、そして帰巣意思の点で、旧来のものとは比べ物にならん。現在のレース鳩を飼育する者たちにとって、それはかけがえのない財産となったが、広い意味での生物の進化においては、ささやかな前進に過ぎなかったようじゃの。
ここで「進化論」で有名なダーウィンんが、伝書鳩について触れておる一文を紹介しようかのう。
「ヨーロッパの各地やインドにおいて、伝書鳩の諸品種に付けている名称をみると、皆この種族がペルシャ、またはその周囲の国儀仁から出たことを示している。(中略)われわれは、カワラバトがバッソラー伝書鳩、すなわち個体によってはクチバシがカワラバトと比べて少しも長くなく、目の周囲や鼻孔の上の裸のような皮膚が極く少しきり大きくない。ほとんど同型の亜種しか見出すことができない。たとえ、バグダット伝書鳩やドラゴンという名称の鳩の過程を経て改良された、イギリスの伝書鳩までをずっと見てきても、そこには極めて小さな一歩ずつの隔たりに破られているに過ぎない一群を見出すのみである」
ベルギーやフランスの現代のレース鳩の祖として一応完成された鳩たちに影響された、イギリスの伝書鳩を指して、前述程度のささやかな評価しか与えていないのじゃ。
ダーウィンのように自然の進化を対象にした壮大な学者の目には、カワラバトから近代伝書鳩への苦心の改良の成果も、さして関心を呼ばなかったようじゃの。体形上の変化は目立たないものであっても、内面的な変化、つまり性能や習性は、全く別品種といってもよいほど進化を遂げた近代伝書鳩であったがのう…。
ついでに、ここで「アンベルソア種」と「リェージョア種」の特徴を比較しておこうかの。
「アンベルソア種」は、頭はやや扁低で前後によく発達し、眼は、虹彩が概して白っぽく、時として赤い斑点があり、眼環は著しく発達しておる。クチバシは長く大きく、鼻瘤もすこぶる大で、首は太く長い。胸は広く、胸骨は非常に強大、体形は長手で脚も長かった。
能力的には知力に富み、高く飛翔する。スピードを持ち、持久力もある。
「リェージョア種」は、頭は中高で左右に発達し、虹彩は濃赤色で眼環は狭い。クチバシは短く太く、鼻瘤は小さい。首は短くて太く、胸は広く、胸骨は厚い。体形は短め、脚も短い。
能力的には、記憶力が抜群で帰巣力も旺盛。悪天候や逆風にもよく耐え、スピードも持つ長距離向きじゃ。
まあ、どちらも現在の基準には遥かに及ばぬが、二大種の外観は全く対照的じゃった。
おっと、頁がなくなってきたわい。この続きは、次回に譲るとするかのう…。
(この稿、続く)